平成16年度第2回技術研修会
『長野県の県産材利用施策と取り組み』


日時:2004年7月15日
会場:本会事務所(長野市稲里町)会議室
出席者:小川、白井、溜田、関、丸山、江本、島田、山本、石井、高橋、永島、片桐、工藤、小山、宮入、窪田、亀山 以上17名

講師:長野県林務部信州の木利用推進課 参事兼課長 河合博氏
    長野県住宅部建築管理課 技術専門員 唐沢栄一氏


(代表(理事長:宮入)あいさつ 略)




「ふるさとの木の住まいづくり事業」と「信州木づくりの家」

 木造住宅の建設状況と木造持家住宅建設戸数の推移をまとめてみました。それによりますと、新設住宅着工戸数(総戸数)は毎年確実に下がっています。そのなかで、木造住宅数は目立った減少とはなっておらず、むしろ増加傾向にあることから木造率は上昇しています。また木造持家住宅に占める在来木造住宅の割合は、平成9年度以降上昇傾向にあります。
 
長野県住宅部建築管理課 技術専門員 唐沢栄一氏

林・住提携モデル事業が木造住宅施策の中心になっています。

木造住宅の設計〜信州木造塾

「信州木づくりの家」認定グループは、昨年16グループの応募があり、4グループが認定されました。今年も認定は受け付けており、期間は6月末から8月20日までとなっています。

(説明 中略)

県産材利用住宅融資も順調です。県産材を活用した住宅をいかに供給できるかが取り組みのポイントです。




信州の木利用推進課と県産材活用の取り組み

 
長野県林務部信州の木利用推進課 参事兼課長 河合博氏


 昨年度までは、森世紀工房で、カラマツ家具をやってきました。それ以前にも3年間埼玉でスギとヒノキを使った木製サッシや家具の開発に取り組んでいました。1月に任期付き職員募集に応募し、4年間の任期で林務部改善をし、なおかつ信州の木をどう売るか、とにかく前を見てみなさんとお話しながら、現場を施策に反映していくということに取り組みます。

 木づくりの住宅でも、在来の軸組工法に限定されていますが、たとえば仮に2×4を作っても良いとか、こちらからの需要になるかと思います。カラマツのようなねじれる木は、こうして大壁のなかに入れてしまうという方法もあるかと思います。ログハウスは県産材ではありません。つまり、認証材でないわけです。認証材は乾燥が15%未満というような、しっかり乾燥していないといけません。それに昔からの天然乾燥、山から伐った木を葉枯らしして、下ろしてきて、丸太をひいて、自然乾燥・養生させ、棟上げするというような方法でも県産材の認証材にはならないのです。大工さんの技能伝承も大切ですが、現実はプレカットも認めていくなどの動きも考えていく必要があるでしょう。いろいろな面から県産材を広げてほしいということ、一般の方、お客さんの視点からのニーズで広げていきたいという話をしていきたいと思っています。


 実現を目指して〜10のビジョン〜

 信州の木でつくる私たちの暮らしを、昨年作りました。こんな暮らしになったらいいな、という「長野県 県産材利用指針」をまとめています。それを実現するために10のビジョンがあります。

 (ビジョン、アクションプランの説明 略)

 アクションプランでは県庁内の全セクションであらゆる場面で県産材を使おうという計画です。そこでは、平成19年度までにH12の実績に3倍の木を使うプログラムを10のビジョンに基づいて作っています。住宅部のやすらぎとぬくもりのローンもこのなかに位置づけています。このように県の関係のものをすべてまとめようとやっています。
 昨年度の実績は1年間で2万m3を使いました。今年も2万m3は予定できていますが、もう一度揉み直して昨年よりも多くしたいのです。やだ長野県の予算は厳しくなっていますので、なかなか伸びはないのですが、かなり努力しています。


 5月1日付けで信州の木利用推進課ができ、8名のスタッフがいます。今日の資料である「長野県 県産材利用指針」にまとめた10のビジョン実践のための課です。これをやっていくためにできたとお考えになってください。


 長野県の森林資源

 県の8割が森林なのはご承知のとおりです。そのうちの半分はおおよそ広葉樹、半分が針葉樹とざっくりと考えてください。さらにその針葉樹の半分が人工林でカラマツとなっています。ですので、全体の1/4がカラマツという状況です。それ以外が、アカマツ、ヒノキとなります。
 35年生から45年経った木がもっとも多くなっています。敗戦の禿げ山から植えたものです。荒廃した山にみんなで植えた木ですが、人間でいえは15歳ぐらいになります。建築用材にするにはちょっと細い。柱に製材したときの歩留まりが悪いということもあります。どんどん外材が入ってきていますし、日本全体の受給量の18%が国産材。あとは全部輸入材です。
 そういう状況のなかで山から木がでない状態ということ、木がでないということは間伐もしないということです。間伐もしないて放置されているのは、たとえば15歳の子供が放置されているようなものです。まだまだ手が掛かってほんとうはこれから一番大事な成長期を迎えていくのに放置されてしまっています。

 できるだけ間伐するということもやっていますが、経済的にもなかなか多くない、というのが状況ですが、今間伐して山に光を入れて、林床に小さな木が生えていかないと土壌が重なっていきません。木そのものに保水力があると思いがちですが、木ではなくて土壌に保水力があります。間伐のできていない鉛筆のような木しか生えていない山は、保水力があまりないのです。つまり土ができていないから保水力がないのです。
 それは水源涵養にもならないし、災害防止ということにもなりません。そのために間伐しなければなりませんが、経済的に成り立たないようではいけませんので、そのために信州の木を使う必要があるのです。木を使うことと山を育てることは、車の両輪のようなものですから、それをやっていかなければなりません。

 それはCO2バンクという名前のとおりですが、木が炭素を固定してずっといる、という説明するまでもない、循環型ができあがります。そのへんも考慮にしながら、間伐材をうまく使った家づくりも進めてほしいと思います。


信州カラマツ

 平成12年度の資料ですが33万m3となっていて、今は25万m3、そのうちカラマツの占める割合は9万m3。信州カラマツといいますし、長野の8割が森林ということで、カラマツがさぞ多いように思われるかもしれません。しかし、北海道、岩手にもカラマツがありますが、長野の年間丸太にして9万m3に比べますと、北海道は12倍、122万m3出しています。信州は森林王国と言いながらも信州は全体の丸太の生産量からすると、木材の生産量は、1位が北海道で122万m3。これに対して長野は20番目ぐらい。岩手も長野よりも多いです。
 木を伐る効率ですが、北海道は平地林で機械も多いですから非常に効率が良いのです。北海道やこれに次ぐ岩手では皆伐方式がとられています。北海道では皆伐しても、平地林が多いので土砂崩れのような問題はあまりありません。岩手も皆伐ですが、こちらではパルプに多く使うなど、安定して伐って使っています。長野では、石灰岩などの脆弱なところも多く皆伐ができません。残しながら伐る、という方法になります。機械は入ることは入りますが北海道、岩手に比べて生産性の非常に低い、つまり素材単価、丸太の価格の高い結果的になってしまいます。おおまかに言って、北海道は7000円/m3程度とすると、岩手は8000円/m3、長野は11,000円/m3と、そのくらいの開きがあります。もともと立っている木の値段はかわらないけれど、生産性が悪いので高くなってしまっています。そういう高い素材を今日お集まりのみなさんは頑張って四苦八苦して使っておられると思います。突然、長野着で破格の値段のものも来てしまうかもしれない現状です。

 このように大人ではない15歳ぐらいのの子供のような木に対して、価格競争力がありませんから、いろいろなところから大事に育てていくことが経済的にも良く考えないといけません。ですから、木を使っていただくために県としては頑張っていきたいと考えていますので協力をお願いします。



 間伐はしてはいるが、山のなかに間伐材が伐り捨てられているものがあります。間伐材を山に残しておくというものは、伐り出すだけ経費がでないのでそうするわけです。前は土木用材にも使われたようですが、そういうものを出してきてペレットにできないかと思っています。

 アクションプランをひとつずつ説明したいところですが、いま一生懸命やっていることを申し上げます。
 ペレット生産工場が上伊那森林組合にあります。この施設は昨年12月に立ち上げ、今年の4月から本格的な生産を始めました。フル稼働しますと年間1750tのペレットが生産できます。平成16年度は500tの生産を予定していますが、いろいろとフィジビリティ・スタディをしますとこの施設では950tぐらい生産をあげないと経費がでない、つまりブレイクイーブンの生産には950tが必要となります。

 これを成功させるためにも、ペレットストーブ、ペレットボイラーの開発をやっています。
 ペレットストーブ、ペレットボイラーは、欧米製がデザインも良く多いのですがまだまだ価格が高いです。日本式は価格は安いのですが、デザインのよいものは少ない、ということで、デザインもよく価格も安いものを開発したいのです。FF方式のもの、つまり吸気して排気するような煙突を付けない方式のもの、煙突を付ける方式の薪ストーブ型、それぞれ2機種、合計4機種を一般価格15〜25万円ぐらいのものをなんとか作っていきたいと思っています。
 ストーブはデザイナー、メーカーが決まって試作中です。大きなボイラーではなくて、スキー場の乾燥室のような場所におけるもの、給湯ができて部屋が暖まるようなものを考えています。まだ試作段階ですが、今年の10月ぐらいからが出始め、モニター販売をしながら来年には本格的にしていく予定です。今年度はできたらモニターを募集しながら県関連の施設に導入していくことがひとつ考えられます。もうひとつは、工場にとっては稼働率をあげるのがだいじですから、大きなボイラー、50万kwぐらいのボイラーは年間200tぐらい使います。そういうものを5台入れれば1000tになります。そのためにプールなどの施設に入れたいと考えています。たとえば稲荷山養護学校などにも導入したいと考えています

 ペレットストーブに対しても、普及させていくには営業活動をやっていきたいと思っています。少なくともご紹介しないといけないわけで、夏あたりからマーケット調査を含めてやっていきたいです。もっとだいじなのは地域の方々の理解を得なければ、わざわざ高いものを買う必要を感じてもらえないでしょう。エネルギー効率からすると5倍ぐらいのコストがかかりそうです。それを地域で入れるのはどういう意味があるのかを、見えるかたちでみなさんに理解していただかないといけません。それは上伊那森林組合の仕事でしょう、というわけではなく、地域の情報をフォーラムなどで紹介していきたいです。




 飯田市に800tのペレット製造工場が今年10月稼働で動きます。飯田市はエコバレーという全体の一環としてやっています。そこはボイラーを中心として飯田市の施設に入れていこうというものです。

 このように南信方面だけペレットが動いていますが、先ほども申し上げましたように間伐を伐り捨てている状況がありますので、それを何とか持ち出して活用していきたいと考えています。



 学校の机やいすについても小学校、中学校には導入していますが、今後も引き続きやっていきますが、今回は養護学校施設向けの特別な車椅子でも使えるタイプ、弱視の方のための工夫などを専門家の先生と開発しています。これは木工の業者に作ってほしいと思っていますが、これは養護学校だけでなく、小学校・中学校や高校、幼稚園など、同じシステムで全員が同じでなくてもいいですが、同じ部材でつくることでコストを下げるようにしてみたいと考えています。
 
 稲荷山養護学校も大きなプロジェクトです。当初平成18年4月の予定でしたが、1年延びて平成19年に開校する事になります。これは木材をたくさん使うということのみならず、カラマツのムク材(ねじれたり扱いにくいのですが)それを金物を使わずに組んでいくだけで使いたいのですが、よほど養生して製材しないといけません。当初体育館を造るには400〜500m3を使います。しれを1品1品の検査していきます。認証は工場で行いますので、これは善意に基づくものです。自主認証なので悪意の入らないようにしなければなりません。認証はトレーサビリティをちゃんと確保し、信頼を作る必要があります。稲荷山養護学校でカラマツをみて、すごいなと思ってもらえるように評価されなければいけません。

 各部局でも、橋などで予算を付けてもらい、説得しながらなるべく木質化、木造化してもらっていくのも私たちの仕事です。土木部では14mの橋をPCから木質にしてもらいましたが、庁内会議でPR、宣伝してきました。自分たちから情報提供を積極的に行っていきたいと考えています。

 こうしたなかで、木材に含まれています炭素をすぐ大気に戻すのではなく、それを固定するような方法をとって、森がきれいになって森づくりがうまくいくと、水がきれいになって、空気がきれいになって住みやすい社会をぜひつくろうと、我々のスタッフも山が好きですので、そこを目標に頑張っているところです。



3.その他意見交換

Q:町で使っていますとストーブは焼却灰の処理が困りますが、供給するのと同時に回収するシステムがあればよろしいのではないでしょうか?農家ですと畑に撒けますが、回収できるともっと普及すると思いますが。
A:ペレットストーブでは0.5%の灰が出ます。薪は5%、ペレットボイラも5%です。そんなに多い量ではないです。上伊那のペレットは灰がそんなにたまりませんでした。ただの点は個人のお宅で庭に撒く程度と思いますが検証するつもりです。ボイラについてはたくさん出ますのでペレット納品時に回収して園芸場などで使っていかないといけないと思います。岩手県では実際にそのようにやっています。ひじょうに良い木質の灰になっているということで、タバコの育成によいと言われていました。

Q:外材と県産材の比率はどの程度でしょうか?
A:年々国産材の比率が低下し、最近では国産材は18%程度です。長野県では9万m3の木材が使われていますが、外材半分、県産材半分といったところです。半分は外材を製材しているのです。



(それ以外にもたくさんの質問に丁寧にお答えくださいましたが、割愛させていただきます。)

事業効果
平成16年度 第1回技術研修会 出席者17名
本NPO会員への情報提供により40名に効果。HP等での紹介によりさらに効果を広げる。



特定非営利活動(NPO)法人 CO2バンク推進機構
http://www.co2bank.org/
co2bank@nifty.com

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